泉屋博古館「ライトアップ木島櫻谷」5月12日までです。

「コノシマオウコク」と、読み方さえ知らなかった2018年の泉屋博古館での展覧会

すっかり魅了され、それ以来、木島櫻谷ファンになっています。2023年「山水夢中」展 

大正中期に大阪茶臼山に建設された住友家本邸を飾った「四季連作屏風」が展示されています。

独特の絵具を用い顔料を厚く盛り上げ筆跡を立体的に残し油彩画のような筆致に挑戦した大正期の作品。

桜、かきつばた、菊、梅。近づいてじっくり見たり離れて眺めたり、4作を一度に味わったり、、、櫻谷の美が集まった展示室の居心地がよく、立ち去り難い思いです。

 

師匠の今尾景年は、写生を重視した円山応挙の系譜を受け継ぎ、櫻谷も、どこへ行くにも画帖を持ち歩き描写力を磨きました。

それに加えて、櫻谷は幅広いテクニックを駆使した。油彩画のような表現、そして近代的な表現による新しい日本画を創造していきました。

そのテクニックが際立つ作品が

「寒月」。日本画的な様式美に油絵風に岩絵具を重ねたドラマチックな作品です。

木島櫻谷を知るきっかけとなった展覧会でこれを見たときには、

自分も雪原の中にいるような臨場感を感じたものです(泉屋博古館東京で2回見ています)

夏目漱石はこれを見て「写真屋の背景にしたほうが適当」と酷評したそう。

櫻谷のセンスのルーツには、狩野派の絵師だった祖父、そして 高級調度を納入する「有識舎」という店を継ぎ絵や和歌、茶の湯に造詣が深い父親がいます。この店を訪れる芸術家や知識人の中には陶工の永樂保全篆刻家・茶人の山本竹雲、そして岸派の絵師・岸竹堂がいたそうです。

木島櫻谷は父親の知己で、当時の京都画壇における大家であった今尾景年に弟子入りします。景年は「櫻谷」の号を与え、父を早く亡くした櫻谷の父親的存在だったそう。また櫻谷は「論語読みの櫻谷さん」と言われるほどの漢籍書物の愛読家であったそうです。

櫻谷の作品を見ると、清らかな華やかさとともに文人画を見たときのような心持ちになるのは、そうした背景があるからでしょうか。


この展覧会では、江戸時代中期(18世紀)京都で生まれた丸山四条派の代表的な画家たちによる花鳥表現を併せて展示することで「大正の呉春」「最後の四条派」と称された櫻谷の「生写し」表現の特質をライトアップしています。

 

岸連山の「寒月照梅花図」がとても気に入りました。この水墨画にとても魅かれ、水墨画を習いたいと思ったのでした。