横浜高島屋 松谷千夏子展 29日までです

湘南美術アカデミー日本画講師の松谷先生の個展を見てきました。

『何も描いていない白の空間が、単なる余白でなく意味を持つように描いています。』

 

自分自身の時間や気持の流れを感じ、想像力が高まるのは、この余白のせいでしょうか。

 

それぞれの作品が生み出す香りが混じり合って、

いつも違った香りを感じさせてくれる先生の展覧会ですが、

今回もよい香り。

果物と樹木を合わせたような、少しフルーティーで爽やかな香りが、心の中から会場内に広がっていきました。

ずーっと居たくなる心地よさ。

 

形、色、ライン、空間、細部まで美しい松谷先生の作品は、オシャレ日本画の最高峰だと思うのです。

29日までですので、約35点の作品が作り出す、この素晴らしい会場に、ぜひお運びください。

 

 

 

日本の風景画のルーツ 憧れの秋田蘭画

秋田県立美術館 藤田嗣治の「秋田の行事」が常設されています。

米穀商を営み秋田の資産家であった平野政吉が、親しくしていた藤田に依頼した壁画です。

 

秋田の文化、風習が俯瞰できる壮大な壁画。お祭りや秋田の人々の暮らしの様子がいっぱいに盛り込まれ華やかです。いきいきとしたエネルギーと同時に神様の存在を感じる厳かな作品でもあると思いました。

カフェもとても素敵です。

 

解体新書

遠近法や陰影法を用いて描かれた精巧な解剖図。

西洋画法を、本草学者・平賀源内に学んだ、秋田藩士小田野直武の作です。

青森、山形、秋田と、このところ東北の美術館に出かけています。

秋田といえば秋田蘭画。角館の武家屋敷のエリアにある平福記念美術館にぜひ行きたかったのですが改装中の期間で残念!

武家屋敷に熊が出たというニュースがあったので、タクシーでガイドしていただきつつ見学しました。熊が登っていたという木を教えていただきましたが、武家屋敷の中心部で驚きました。

石黒家は佐竹北家の用人(勘定役)を勤めたお家柄。(秋田県知事の佐竹敬久氏は、江戸時代の秋田藩主佐竹家の分家・佐竹北家の21代当主です)
角館に現存する最古の武家屋敷といわれるこの石黒家には今でも直系のご家族が住んでいらっしゃいます。

ここ一軒のみ、部屋に上がり、武家屋敷特有の内部を見学することができます。

代々伝わる武具甲冑類・古文書(解体新書関連資料を含む)・雪国の生活道具なども常設展示されています。

 

 

秋田蘭画とは江戸時代中期、小田野直武をはじめとする、秋田の藩士たちが描いた絵画のことです。西洋や中国からもたらされた陰影法や遠近法などの洋風表現を日本画の型に当てはめて描かれたものだそうです。

直武が秋田蘭画を描いたのは、江戸にきた安永2(1773)年から直武が亡くなる安永9(1780)年・32歳!までの、わずか7年間ですが、
日本画に大きな影響を与えています。
最初に本格的に日本の風景画を描いたのは秋田蘭画であり、北斎や広重の浮世絵や司馬江漢の風景画(油絵)は秋田蘭画から始まっているのだそう。

日本の風景画のルーツが秋田蘭画にあったとは!

武家屋敷のアイドル 秋田犬の武家丸くん。唯一会えた秋田犬です。

小田野直武一族の分家にあたるお屋敷があります。

秋田内陸線にも乗ってみました。鉄道ファンの気持ちが少し分かりました。

 

友人のオールドノリタケのコレクターが見せてくれた花瓶に、遠い景色と手前の大きな鳥、花が描かれていました。

これは!憧れの秋田蘭画みたい!

花瓶という形状が秋田蘭画のように見せてくれたのかしら?

 

泉屋博古館東京「日本画の棲み家」17日までです

床の間や座敷を飾る日本画の魅力に浸れます。

 明治時代の西洋文化の到来により、西洋に倣って展覧会制度が導入されたことで、日本画の「棲み家」が変わってきました。
それまで床の間や座敷を「棲み家」としていた日本画は展覧会芸術という巨大で濃彩な表現へとシフトしていきます。

このような時代のなかで集められた 泉屋の日本画の展覧会です。

来客を迎えるための屏風や床映えする掛軸など、来客をもてなしたり、家族のお祝いごとを彩るための絵画は、邸宅に合わせて飾るために描かれたもの。

富士や寿老人や吉祥モチーフや可愛い鳥や動物など、 邸宅の雰囲気に合わせて飾られた作品は、当主のお人柄を感じさせるものでした。話しかけたくなるし、お返事してくれそうな作品がほとんどで、 当主の愛おしんだであろう様子が想像されます。語りかけてくれるような作品が並ぶ、あたたかさと親しさに包まれた幸せな展覧会場です。
橋本雅邦の「春秋山水図」はひと目で屏風の世界に引き込まれ、自分の家にいるような居心地の良さに包まれました。

木島櫻谷、竹内栖鳳岸田劉生宮川香山狩野芳崖富岡鉄斎平福百穂など、清々しく親しみのある作品が揃っています。
木島櫻谷は3点あるので、木島櫻谷展を見逃してしまった方はぜひぜひ。

掛軸と共に飾られた宮川香山などの作品も当時の取り合わせで展示されています。

また、現代の作家が考える「床の間芸術」も見どころです。

 

六本木一丁目のクリスマス🎄

美術館併設のハリオカフェではシュトーレンもいただけます。

林明日香〈partition〉

 

澁澤星〈warer〉

泉屋博古館東京「楽しい隠遁生活 文人たちのマインドフルネス」15日までです。

 六本木一丁目の泉屋博古館東京で「楽しい隠遁生活 文人たちのマインドフルネス」を見てきました。

隠遁 いんとんという読み方でよかったかしら?と思ったほど 久しく聞いていない言葉でした。年齢を重ねた男性の、知的で清貧で優雅な生活がイメージされます。
思い浮かぶ人は細川護熙さん。
60歳で政界を引退して、湯河原で作陶 や書画など趣味を楽しむ暮らしをしています。(細川家ゆかりの京都の禅寺 や奈良 の薬師寺に障壁画を奉納 しています)
引退したときは、庭の桜を守りながら
晴耕雨読」の生活を送る予定だったそう。

「楽しい隠遁生活」では、  文人たちが理想の隠遁空間をイメージして描いた山水画や風景画、 彼らが慕った中国の隠者たちの姿を見ることができます。

人の心を惑わす富貴や栄華など世俗的な欲望を絶ち、世間から離れて高潔に生きたいという「脱俗」の思想を持つ隠者たちが暮らすのは、自然の移ろいを楽しみ、文化芸術に親しみながら、自由に生きる世界「桃源郷」。

せわしない俗世を離れ清雅な地で隠遁生活を送りたいと願った文人たちのマインドフルネス (安寧な心理状態)に触れることで、なにか気づきを得られるのではないでしょうか、という展覧会です。

自身のライフスタイルについて考えてみる機会になるかもしれません。

 

以下は、隠遁に心寄せる60代男性の感想です。

 
隠遁、それは古代より憧れであり試練でもあった。
心惑わす富貴や栄華 世俗的欲望を絶ち、自然の摂理に身を委ねる高潔で清閑な暮らしには誰しも心惹かれる。
一方で、長閑でたっぷりとした時空間をいかに精神の崇高さに繋げるか、才なくしてはもて余す。
本展覧会では脱俗を許された高人たちの暮らしぶりが見て取れる。
現代に例えればFIREやハッピーリタイア層であり決して雲の上の話ではない。
デジタル社会が進展し時空間はさらに拡張した。それぞれが隠遁2.0を構想する必然は増大しているのだ。

泉屋博古館「木島櫻谷 山水夢中」展 23日まで。

泉屋博古館で、近代の京都画壇を代表する日本画家・木島櫻谷(このしま・おうこく1877-1938)の展覧会を見てきました。

動物画で知られる櫻谷ですが、京都画壇の重鎮・今尾景年(1845~1924)に写生を学び、生涯山水画を描き続けた画家でもあります。写生を基礎に技術と独自の感性で描かれた櫻谷の山水画の世界は、洋画の雰囲気もあり、親しみやすく新しいものでした。

《寒月》は泉屋博古館で2018年に開催された木島櫻谷「近代動物画の冒険」で素敵なアートタイム) 見たので2回目。初めて体験した木島櫻谷展で、一番記憶に残った作品でした 。

雪の積もった竹林にキツネが一匹。黒と白の墨絵のように見えるのですが、黒い森には深い青や深い緑、空にはシルバーグレーの絵の具が使われていて奥行きや質感が感じられます。幼いころから漢詩に親しみ古画を愛したという櫻谷のならではの詩情豊かな作品です。

《駅路之春》は六曲一双の屏風絵で、茶店でくつろぐ旅の人たちと、白黒2頭の馬が描かれています。旅の荷物や樹木も描かれ、構図や色彩などモダンな雰囲気で、なんともいえない魅力がありました。


東京で初公開となった南禅寺塔頭南陽院本堂の山水障壁画も観ることができました。

櫻谷生涯のさまざまな山水画を中心に、確かな画法に支えられた詩情豊かな世界を味わえます。ぜひご覧ください。

※作品の入れ替えがあります。

 

こちらは薬師寺

書家の桃蹊(とうけい)さんに教えていただき奈良の薬師寺で、平山郁夫画伯の大壁画を見てきました。
平成三年に落慶法要をした玄奘三蔵院伽藍 にあります。
《大唐西域壁画》は、平山郁夫画伯自らが玄奘三蔵の足跡を訪ねた30年間の集大成となる大作です。
壮大で豪華!絵の具に宝石が使用されていて、「天山越え」のブルーは、ラピスラズリ。 白い部分は長石(ムーンストーン)。
天井一面に広がるのはラピスラズリの青い空。ゴールドも使われています。

平山郁夫玄奘三蔵の求法の道の追体験は、画家としてのスタートである「仏教伝来」から始まりました。過酷なシルクロードでの取材を重ね、薬師寺の「大唐西域壁画」を絵身舎利として奉納することで結実しています」

撮影禁止ですが、被爆者でもある画伯が思いを重ねながら進めた、その深さと高潔な魂の結集は、写真では伝わらないものだと思いますのでぜひ訪れてみてください。

 

こちらは、京都 東山の圓徳院の
長谷川等伯筆 重要文化財《方丈襖絵》

 

 

氷室神社蔵

春日大社に奉納する「煌」を描く桃蹊氏。

宮沢賢治の『インドラの網』から受けたインスピレーションで、賢治の心象スケッチを自身の心象の墨風景として表現したもの。

 

鏑木清方記念美術館「東の美人画家、鏑木清方」25日までです。

紫陽花が見頃の鎌倉の鏑木清方記念美術館へ行ってきました。東の清方 西の松園といわれる京都画壇の上村松園の作品も並び、近代美人画の世界を堪能してきました。

比べて見るのも面白いです。

清方は、東の人なので京都の芸姑さんの本質的なところは描けない、というようなことが解説にありました。

絵を描くということは、そういうことなのだと気付かされました。そして清方の作品に流れるものを感じました。

水野年方の元で勉強するほか梶田半古の画塾へも通った年方。23才のときの《浅みどり》には半古の清新な画風が出ているということです。

「技は水野先生、こころもちは梶田先生から啓かれた」

梶田半古の作品も見てみたくなりました。

紫陽花が清楚に迎えてくれる美術館は、この季節に出かけるのにピッタリです。

清方は紫陽花が大好きで『紫陽花舎随筆』というタイトルの随筆集を残しています。

清方の文章はあたたかく洒落ていて、いつまでも読み続けたいような、心地よいリズム感があると感じます。絵も好きですが文章も大好き。鏑木清方さんという人が好きなのだと、読むたびに思うのです。

 

 

目黒区美術館「ベルギーと日本」18日までです。

武石弘三郎は湘南美術アカデミーの生徒さんのお祖父様

ロダンと同時期に活躍したベルギーを代表する彫刻家、コンスタンタン・ムーニエの作品。労働者の姿を力強いリアリズムで表現しました。

現在の日本ではほとんど知られていないのですが、武石がベルギーの彫刻家を精力的に紹介したことから、明治から大正にかけて、彫刻界では流行を見せたという彫刻家です。

 

齋藤素厳は武石のもとで彫刻を学び影響を受けたそう。

建築と彫刻の統合を目指した、建築の新古典主義に合わせたという、東京株式取引所が日本にあったとは思えないほど素敵です。ムーニエの造る労働者からの影響も見られます。

武石弘三郎を通して、ムーニエや齋藤素厳や日本にあった魅力的な建造物を知ることができました。

 

太田喜二郎

大原美術館における作品収集でも知られる児島虎次郎の作品

ウジェーヌ・ラールマンス

エミール・クラウス

 

太田と同時期にベルギーに留学していた児島と彫刻家の武石を中心に、

戦前の日本におけるベルギー美術の需要を紹介する展覧会。印象派の絵画も充実しています。

これまでベルギー美術に注目する機会がなかったので、たいへん興味深く鑑賞しました。

目黒川沿いのお散歩に合わせて、ぜひご覧ください。

 

 

ルネ・マグリットの作品も。