泉屋博古館で「歌と物語の絵―雅やかなやまと絵の世界」を見てきました。
江戸から明治にかけて描かれた、やまと絵の展覧会で、「うたう絵」「ものかたる絵」「れきし画」の3つのジャンルに分かれています。
三大物語屏風(平家物語、源氏物語、伊勢物語)、竹取物語絵巻など、有名な古典文学が描かれた屏風や絵巻は
、映像作品を見るように生き生きと、親しみやすく物語の世界を感じさせてくれました。屏風や絵巻というのは、シンプルな形状でありながら、
3次元(縦横高さのある世界)にも、4次元(時間のある世界)、そして5次元
(無数の時間を持ったパラレルワールと言われる世界)まで味わえる、なんという奥深い手段なのでしょうか。
自分の感情や想像力でどこまでも物語の世界が広がることに、つくづく感心し感動しました。物語を伝承したいと思ったいにしえの人々の気持ちを近くに感じます。
本阿弥光悦の作と伝わる「葛下絵扇面 散屏風」は華やか。屏風の中に古今和歌集などの勅撰集や道歌や禅語などが書かれた60枚の金色の扇がぎゅうぎゅうに詰められています。
扇面の間は葛の葉や蔓で埋め尽くされていて、金と緑の華やかさが目に飛び込んできます。けれど扇面のひとつひとつに書かれた文字や水牛や草花の絵が静かな時間をつくっています。圧倒されるような華美な派手さと知性に魅力を感じました。
また、室町時代の絵巻で重要文化財の「是害房絵巻」も楽しいものでした。
中国の天狗が叡山の相と法力を競い、負けた中国の天狗が日本の天狗に介抱されているのです。天狗はフクロウのように見える被り物をしているのが面白い。
みんなが被っているところをみると定番なのでしょう。天狗の衣装を初めて見ました。
中国の天狗は傷を癒すためにお風呂に入っていますが、この場面が、日本で最も古い入浴図だそう(天狗の入浴が一番古い入浴図なんですね!)
華やかで華麗、そしてユーモラスなやまと絵の世界を楽しめる展覧会でした。