横浜正金銀行旧本店本館を活用した博物館。明治37(1904)年竣工の歴史ある建造物です。
関内にある、神奈川県立歴史博物館で 「近代輸出漆器のダイナミズム―金子皓彦コレクションの世界―」展を見てきました。
輸出工芸のコレクターとして長年、海外を中心に蒐集してきた、金子皓彦先生のコレクションから、芝山漆器や、静岡・会津などの産地で制作され、横浜を通じて海外へ渡った輸出漆器を中心とした展覧会です。
同時代に漆器と括られることもあった、寄木細工や木象嵌などの輸出向けの木工芸が展示され、近代輸出漆器の驚くべき魅力に触れられます。
開港後にはパリ万博で注目を集め輸出が本格化したため国内向けとは違う、西洋の趣味を反映した漆器が作られました。
衝立や飾棚といった大きな家具から小箱やアルバムの表紙などの小さな土産物まで、和の文化に西洋の嗜好が融合した漆器のデザイン性には目を見張るものがあります。
明治時代の箱根の飾り棚は、2階建ての日本家屋を太鼓橋でつなげた奇抜な意匠!
横浜は、輸出漆器の中心地で国内各地で生産された漆器が集められ、輸出される貿易港でした。さらに、各地から漆器商や職人が移り住み、近代では有数の漆器の産地ともなりました。なかでも貝や象牙などを立体的に象嵌する芝山漆器は、その花形だったそう。
動物の骨を繊細に加工しダイナミックに使用した芝山漆器はかなりの迫力!
海外向けのため日本にはほとんど残っていなかった漆器を里帰りさせた方が金子先生です。今回の展示の90%が先生のコレクションです。
金子先生は、世界的な美術品だけでなく、既存の学問体系では重要視されてこなかった、藁細工、竹細工など、その時代や人々の生活、心持ちがわかるような工芸品にもあたたかく好奇心あふれる眼差しを注ぎ続けていらっしゃいます。
金子先生が半世紀以上かけて蒐集したさまざまなものが並ぶお部屋にも驚きがいっぱい!なんという器用さ、愛らしさ、センスのよさ、日本人の深い魅力に気付かされます。
近くには旧富士銀行横浜支店を活用した東京藝術大学があります。