

浴場をテーマに日本と古代ローマを紹介した展覧会でした。
テルマエ(大型大衆浴場)を通して、ポンペイの壁画などのコレクションで有名なナポリ考古学博物館の作品などが2000年前の世界に誘ってくれます。
公共浴場のルーツには、自然の温泉のほかに、古代ギリシャの運動施設の水風呂や、医神の神域の入浴施設がありました
それを大衆の娯楽のために、驚くような規模へと発展させたのは古代ローマ人。
クラウディウス水道から水をひき、5千ヘクタールもの森林から火を起こして建設されたテルマエには床下暖房もあり、
運動場、サロン、図書館などを備え、彫像や絵画も見ることができる美術館のような役目も持っていました。
ローマの大規模なテルマエには、皇帝や浴場の建設者の肖像のほかに、神々の像や古代ギリシャの有名作品のコピーの大理石彫刻が数多く飾られました。
3メートルもあるヘラクレス像が飾られ ヴィーナスも多く描かれ 床には水に強いモザイクが敷かれました
(1〜2世紀には白黒モザイク、それ以降はカラフルなモザイク)。
台所やトイレ、風呂が無かった大衆の、心身の健康を促すとともに教養を授けるスーパー施設だったのです。また労働力をいかす場所でもあるという好循環が素晴らしい!
テルマエは単なる娯楽施設ではないのです。
古代ローマ初のテルマエ(大型大衆浴場)である、アグリッパ浴場(BC1世紀)を建設したのは皇帝のアグリッパ。
貧富の差が激しかった古代ローマで、労働力を担う大衆民の不満を解消すべく造られたのがテルマエです。
アグリッパは古代ローマの軍人・政治家で、軍事の才能がまったくなかったローマ帝国初代皇帝アウグストゥスに代わって戦場に赴き戦略を繰り出し指揮し、自らも最前線で戦った人。
そのうえ建築にも造詣が深く、ローマに多くの建造物を建設させました
(紀元前25年にパンテオンやポン・デュ・ガール(フランスの水道橋)などが知られています)。
なんて素敵なアグリッパさま。日本にもこんなリーダーが現れないものでしょうか、、、。
この展覧会で、いつも眺めていた石膏像のアグリッパが大好きに!
よく見ると男らしいよい顔をしているんですね。思いを込めてアグリッパさまのデッサンに久々に臨みたいです。
展覧会でもアグリッパ胸像が見られます(本物はルーブル美術館)。カラカラ帝胸像、治癒神であるアポロ・ピュティウス坐像など、ポンペイの壁画で有名なナポリ国立考古学博物館の彫刻が充実していました。
ストリギリス(肌かき器)というものがありましたが、これは肌に塗った油を落とすヘラのような道具。
ギリシャの若者は肌に油を塗って裸で運動したそうで、汚れを落として水で身体を洗ってお風呂に入るというお作法があったのです。
温泉好きの日本人とギリシャ人。親しみを感じますね。
古代ローマ都市の暮らし・饗宴の章に、「レダと白鳥ランプ」がありました。平山郁夫シルクロード美術館所蔵の1,2世紀のものです。
レダと白鳥をモチーフにした作品で古いものはダヴィンチ、ミケランジェロだと思っていましたが、こちらはさらに、ずっと古い!
主神ゼウスが白鳥に変身し、スパルタ王テュンダレオースの妻であるレダを誘惑したというお話し。女性同士、女性と白鳥の性愛のエピソードです。
西洋の彫刻や絵画などのモチーででよく見かけますが、どの作品も魅力的。
女性と白鳥の組み合わせは、形も面白く、想像をかきたてられる憧れのモチーフです。
この神話が古代世界に作品となっていたことに感動し、思いがけない喜びとなった展覧会でした。




