青木享起先生による「フィレンツェ式絵画修復講座」 8月19日(土)、9月16日(土)、体験講座を行います。

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50人以上もの方が、約2時間の講座を聴講されました。


絵画の修復には2つの作業があります。
1キャンバス、板、ボード、木枠など、画面を支える部分の劣化を防ぎ強化する、保存修復
2画面の汚れ、欠落、変色等損なわれた部分を復元し、作者の表現を正しく伝える、美的修復

1,2の順番で行われます。

1。PULITURA(画面の汚れの除去)
 一口に汚れと言っても画面にはいろいろなもの
 が混在して付着しています。ほこり 、煤(す
 す)、かび、たばこのやに、泥、酸化物等々。
 これらの汚れを取るためには種々の薬品を使い分けます。
 
画面にワニスを塗ってある作品の場合、汚れはワニスと
 共に落とします。薬品の選択を間違えると絵具層に
ダメージを与えるので慎重に行います。
 特にワニスの施されていない作品は、汚れが直接絵具層に付着しているため、
特に慎重さが必要です。

2。STUCCO(欠損部への充填と整形)

 絵具層の欠落した箇所にジェッソ(ボ
 ローニャ石膏)をふるいにかけ兎膠(うさぎにかわ)と練り合
 わせて充填します。 ジェッソが乾いたら作品の表面の連続性
 を持たせるように整形します。

3。RITOCCO(補彩)

 油彩画であっても油絵具で補彩は行いま
 せん。同じ材料を使うと、次の修復の時に、オリジナルを傷つけてしまうのだそう。

また何十年後かに修復が必要な時に、修復前の状態に戻せる方法で修復を行います。
まずジェッソの上にグアッシュ等水溶性の絵具で補彩し、
その上にダンマル等のワニスを塗布しその上から修復専用の樹脂絵具で
最終的な仕上げをします。

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板に貼った絵のコピーで練習します。こちらは修復済みのものです。
どこを直したかわかりますか?

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予想がつくところは、このように。

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予想がつかないところは、このように。
「修復したことがわかる」ための、決まった描き方があります。


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57歳で、LALを退職し、修復士になるためにフィレンツェへ。
57歳で新たな世界へ飛び立った青木先生。修復士を目指す方でなくても、青木先生の道のりは、興味深いはず。

後ろにあるのは青木先生による模写作品です。
                               
                              

修復士を目指す人は、歴史学から文化修復に興味を持った人が多いそう。
美大を出ている人は、あまりいないとのこと。
美術史学、民族学など、修復家にとって「人文科学」の勉強が大事なのだそうです。

描かれた年代も作者もわからない、ボロボロの絵を前に、
修復士は、額縁やキャンバス、板などの支持体から、描かれた年代を予測します。
すると、その年代の流行や常識といったものがわかります。

そして、「この時代の、この絵を描く人」に成りきることで、
作者の感性を自分のものにし、作業に取り組むのです。

空が大きく破けている、100年前のものと予想される作品を見て、
私「ここに鳥が描かれていたかも知れませんね」
修復士の方「この作風だと鳥はいませんね」
・・・こういうセンスが必要とされるのですね。

「修復士には、絵の上手さより、感覚、センスが必要。ただし模写力は大切です」と青木先生。
修復教室では、作業に並行して、模写のレッスンも行います。

                                 

絵画修復の魅力とは、修復を通して、その時代にタイムトリップできることではないかと感じました。
宗教画であれば、描いた画家の思い、宗教画を見つめた人たちの願いなど、
謎解きのようにいろいろなことが、深く深く見えてくる・・・。

8月19日(土)、9月16日(土)
一日体験講座を行います。
絵画修復の魅力を体感しに、ぜひいらしてください。