風景画が誕生するまでに歴史があったの??と思いつつ。
風景って最も身近なモチーフなのじゃないかしら??
ウィーン美術史美術館の所蔵する絵画作品のなかから
「風景」に焦点をあてて選んだ約70点の作品により、
「聖書」や「神話」の物語の舞台として描かれ、
次第に独立したジャンルとして確立されていくヨーロッパにおける風景表現の歩みを、
その誕生から展開に至るまで展観していくというものでした。
ヨーロッパでは15 世紀以降、描かれた窓を通して風景が絵の中に取り入れられはじめ、
次第に聖書や神話の物語の舞台として生き生きとした風景表現が登場します。
16世紀にアントワープで活躍し、美術史上初めて「風景画家」と呼ばれたと言われるパティニールは、
聖なる主題と背景の風景の比重を逆転させ、パノラマ風景を生み出しました画家です。
ポスターになっているのは、パティニールの、色彩遠近法(暖色は視覚的に前に出て見え、寒色は奥まって見えるという色彩の効果)を利用した、奥行きのある風景画です。
17世紀になると聖書や神話の物語の舞台としてではなく、独立した主題として広まり、
次第に専門分野へと分かれていき、
17世紀半ばのオランダの画家たちは、身近な風景をそれぞれの感性によって描き出したのです。
風景画の誕生は、意外と最近なのですね。
聖書や神話などの絵の中に描かれている風景は、小さなスペースでも、
よく見るととても丁寧に描かれています。
一緒に見ていた画家に聞いたところによると、
お金になる絵であった、歴史画、宗教画、肖像画と比べ、
風景画という需要がなかったため、画家は与えられた主題の中で、精一杯描きたいものを描いたとのこと。
画家たちは、本当は風景を描きたかったのかも知れないのですね。
主題にばかり目がいき、しっかり目を留めることのなかった背景の中にある風景にこそ、
画家の夢や思いが詰まっていたかもしれません。
これからは、小さな風景も、よく見ていかなくては。
会場には「天の時間と地の時間」が織りなす月暦画(カレンダー・ペインティング)の間ができていました。
「1年12カ月の月暦画中に現れる風景」で、その月の人々の暮らしや、空や木や花や葉、季節の景色がわかります。
夕方から見に出かけたのですが、日が短いため、外は暗く、クリスマスイルミネーションがきれい。
冬のウィーンの冷たい空気やグレイっぽい景色を思い出しました。
昼間より夕暮れから夜にかけてが似合う素敵な展覧会でした。