サントリー美術館 「日本美術の裏の裏」11月29日までです。

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サントリー美術館で「日本美術の裏の裏」を見てきました。
なんとなく見ていた作品も、新たな見方を知ることで、いきいきと心に入ってくるものですね。

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丸山応挙の青楓瀑布図
この絵を前にした時、どんな気持ちになりますか?
写実的だ、さわやかな色彩、など何がどう描かれているかに注目することが多いかもしれませんが、この絵をどこに飾ると素敵か、そこがどのような空間になるのかと想像を広げるのも、古来培われてきた美術鑑賞のひとつなのだそうです。

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春夏花鳥図屏風 狩野永納 江戸時代 17世紀

春と夏という異なる季節で構成されています。季節を超えた理想郷 。屏風は部屋に飾るだけで、異空間を出現させることができる装置なのです。


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武蔵野図屏風
この屏風を立てれば部屋にはたちまち薄が生い茂ります。

絵を置くだけで、その空間は変わり、心が動きますが、
屏風は、屏風に描かれた世界に、心も体も連れて行ってくれるよう・・・。
日本絵画がつくりだす元祖「仮想現実」の世界を、昔の人は楽しんでいたのでしょう。

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室町時代 16世紀に描かれた「かるかや」は、上手・下手を超越した、描き手の心が生き生きと伝わってくる作品です。
リアリズムと対極にあるファンタジーの世界を楽しむ心が、こうした作品を守ってきたのです。


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色絵桜楓文透鉢 仁阿弥道八 江戸時代 19世紀

桜と楓の取り合わせは『古今和歌集』の序で、奈良県吉野山の桜と龍田川の紅葉が対で称賛されたことに由来します。
やがて桜と楓(紅葉)は、それだけでも吉野と龍田を意味するようになったそうです。桜を「雲」、紅葉が「錦」に見立てられたことから、桜と楓(紅葉)の雲錦模様といわれています。対比されつつも一つの鉢に収まって、これも美しい仮想の世界でしょうか。永遠にめぐる季節を表しているそうです。


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信楽焼のコレクションです。
多方向から見て、自分の好きな景色を探してみましょう。
鳥は仁清の色絵鶴香合です。

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鼠草紙絵巻 室町~桃山時代 16世紀 

人間との結婚を企てるネズミのお話。500年も前から、ネズミのキャラクターがいたなんて驚きです。

空間をつくる、小をめでる、心でえがく、景色をさがす、和歌でわかる、風景に入る 
この6章から日本美術の名品を紹介しつつ、鑑賞法を教えてくれる、たいへん貴重な、楽しい展覧会でした。

湘南美術アカデミー