現代日本画を中心に、4000点を超える作品を所蔵する美術館です。
展望室から望む芦ノ湖と富士山の景色は、いつの季節も、
一枚の絵画のような素晴らしさです。
今回は「柳沢正人 落花流水」展にて、柳沢正人先生にお話を伺いました。
1955年 長野県佐久市生まれ
数々の受賞歴を持つ柳沢氏。
世界中の文化遺産や自然遺産を描き続けています。
世界遺産を巡る、というより、何とも言えない魅力を感じて描いた場所が、
のちに世界遺産になった、ということです。
「フィレンツェの燈」は柳沢先生が考えた手法「分割画面」によって描かれています。
大画面を分割するという、このような絵は始めて見ました。
まるで、六曲一双の屏風画のようです。
柳沢先生の制作のテーマは「刻」。「とき」と読みます。
分割された隙間によって、時空間を表現しているということです。
屏風は、折ることで立体感が生まれます。
山ができれば谷もできます。
正面から見たり、左隻(せき)、右隻(せき)と視点を移して見たり、
山の陰の谷に息づくものを感じたりする楽しみがあると思います。
「フィレンツェの燈」も屏風絵のように見てみました。
左隻から右隻へ見ていくと、大きな時間の流れが見え、
隙間を見ると深い時間の流れが見える。これは「時の割れ目」なのだと思いました。
なんと立体的で壮大なフィレンツェの「刻」!
柳沢先生は「油と石の文化であったルネサンス時代を描くことで、
火と水の文化だった、日本の弥生時代に思いを馳せる」とおっしゃっていました。
「地球の歴史は46億年。最古の文明はメソポタミアの約5000年前。文明とは地球の歴史の中で、なんと小さいものだろうかと思うのです」とのことで、
「イタリアを中心とした建造物から、アメリカ、アフリカの大陸に興味が移ってきた」といいます。
先生の作品には、脈々と流れる大自然のエネルギーを見ることができます。
鉱物、植物、動物など、天然自然に存在するものが多くあります。
素材自体が悠久を刻んでいるのです。
洋画の魅力も感じさせる柳沢先生の日本画は、
斬新さとともに古来より続く日本画の素晴らしさを堪能できます。