
明治時代を中心とした日本の工芸作品は、細密、写実的な表現で、近年高い人気を集めています。
台湾人のコレクターが明治工藝の一大コレクションを持っており、その「宋培安コレクション」から、
今回は、100点以上もの名品が、まとめて紹介されています。
「自在置物」「ビロード友禅」をはじめ、漆工、金工、彫刻など、
職人の技術の高さと情熱に驚かされる展覧会です。

《自在龍》(宗義)
まず天井から吊るされた、全長3メートルもある世界最大の、龍の「自在置物」にビックリ!
「自在置物」というのは、このたび初めて知った名前です。
そのもの通りに動くという意味でしょう。
日本の金属工芸品の一つの分野なのだそうで、
細かい金属パーツを組み上げ、龍、蛇、鳥、伊勢海老、蟹などを写実的に作った模型です。
大きい物だと何百点にも及ぶ、細かい金属パーツから成るのだそう。
本物そっくりなのも驚くのですが、
体節・関節の部分が本物通りに動くように作られているのですから、もうビックリ。
どれほど複雑な仕組みが施されているのでしょうか。




動かしてみたいー、動いていることがぜひ見たい!
その様子を動画で見ることができます。
《自在蛇》(明珍宗春作、江戸時代)が、箱の中からニョロニョロと自由に動き出します。
そして、長く伸びた後、くるくるとホースのように丸くなり、箱に収まる。
「自在」の蛇は、とてもスムーズに動くのですね。






《厳島神社鳥居図壁掛》無名 (こちらは10月2日までの展示です)
もうひとつ、感激したのは「ビロード(天鵞絨)友禅」。
墨絵?絵画だと思い近づいてみると???起毛した布地!
これまで、絵が織り込まれた素晴らしいタペストリーも、ずいぶん見てきましたが、
それらよりもずっと遠近感があり感情表現が感じられるものでした。
ビロード友禅とは、何と日本人の心に響く工芸品なのでしょうか・・・と思ったら、
「自在置物」と同じく海外で高く評価され、
日本ではあまり知られず、残っていないのだそうです。
ビロード友禅は、京都の呉服商だった西村総左衛門(1855-1935 明治-昭和時代前期の染色家)が、
京友禅の振興をはかるために発明した技法。
ビロードは表面が毛羽だって、そこに友禅染を施すことは困難ですが、
この技法によって、光沢のある生地に、色糸や黒糸で、
絵画的な模様を染めた作品ができるようになったのだそうです。
竹内栖鳳の下絵のビロード友禅!見てみたいです。どんな絵を描いたのかしら・・・。
「驚きの明治工藝」展は、10月30日( 日)までの開催です。
ぜひご覧くださいね。