藤田嗣治の『キキ・ド・モンパルナス』09月16日

 神奈川県立近代美術館、鎌倉別館の9月9日までの展覧会の併陳で、新収蔵作品展―藤田嗣治《キキ・ド・モンパルナス》が初公開されていました。

藤田嗣治《キキ・ド・モンパルナス》1926年
特徴ある藤田の絵は、日本画の手法を取り入れた洋画で、墨を使っているのだそう。魅力的な乳白色には和光堂の販売しているベビーパウダー「シッカロール」が使われていると解明されています。

春頃公開された映画、ウディ・アレン監督の「ミッドナイト・イン・パリ」をご覧になりましたでしょうか?主人公が迷い込むのもちょうどこのころのパリでしたね。
フジタもモンパルナスに住むエコール・ド・パリの画家だったのです。

ミッドナイト・イン・パリ』の主人公はハリウッドの売れっ子脚本家でありながら、脚本の仕事より小説を書きたいと思っているギル(オーウェン・ウィルソン)。「パリの雨に濡れながら歩く」ことを素敵だと考える男性。チャーミングな婚約者とその家族は、現実的で通俗的。婚約者一家と旅行でパリに行ったギルは不思議な体験をします。

真夜中にひとりで道に迷っていると、クラシックカーに誘い込まれます。連れていかれたのは1920年代の偉人達が集う社交クラブ。そこで出会うのは、フィッツジェラルドコール・ポーター、ヘミングウェーら。パーティーの主催はジャン・コクトー。そう、1920年代のパリにタイムスリップしてしまったのです。

もうこれだけでも楽しいのですが、さらに、ピカソの愛人(マリオン・コティヤール)と、1890年代、ベル・エポックの時代にタイムスリップしちゃうのです。すると彼女は、1920年代は退屈だから1890年代にとどまると言うし、ロートレックゴーギャンは、ルネサンスの時代の方がいいと言う。過去は美しく素晴らしく思える、ということでしょうか。

現代のパリに戻ったギルは、コールポーターが流れていたノスタルジーショップ(古物店)の女の子と再開し、降ってきたパリの雨に濡れながら楽しげに歩くのです。婚約者とは別れちゃう?そんなことはどうでもよいですね。だってすべて夢の中のようなお話なのですから。

夢のようなストーリーに、名画に光が散りばめられたような、あたたかく深みのある美しい映像の昼のパリ、夜のパリ。素敵ポイントが多すぎて書き忘れていましたが、すべての音楽の心地良さも魅力です。

いつでも見たい夢のような乳白色の作品『キキ・ド・モンパルナス』、常設していただきたいですね。合わせて『ミッドナイト・イン・パリ』もぜひ。