鏑木清方記念美術館「うつりゆく時代を見つめて―江戸から東京へ―」

 鏑木清方記念美術館「うつりゆく時代を見つめて―江戸から東京へ―」を見てきました。

「暮れゆく沼」(明治33年、1900)という作品がありました。
 若い女性が草の上に座って横笛を吹いています。働く日常着のような着物で藁草履、という素朴な姿ですが、なんと綺麗な人でしょうか!
モデルは清方の従姉と説明に書いてありました。
こんなに綺麗な従姉さんがいたのですね。この美しい人は、どのような生涯だったのでしょうか、と思いをはせ、清方の美人画の原点はここにあったのかも知れないと思いました。

美しい女性?少女のようにも見えます。
裸足に藁草履なのですが、片方脱げていて、そのまま構わずに笛に夢中になっている様子は幼く感じられます。
草の上に座っている、その姿勢も、描かれているという意識があまりないのか、自然で可愛らしいのです。

けれど、木々の葉が落ちた、秋の夕暮れの沼の景色は物悲しくて、横笛の女性も寂しげに見えます。

ロビーで図録を見ましたら、詳しく書いてありました。
モデルは一緒に暮らしていた従姉のキクさん。清方と結婚すると思われるほど仲がよかったのですが、親戚の家に養女に出され、いじめられ、お嫁にいくも病気になって若くして死んでしまったということ。
なんて悲しいお話しでしょうか。

あらためてもう一度「暮れゆく沼」を見てみました。
1900年の作品で、清方は1878生まれですから 22才のときの作品です。
従姉、とあるのでキクさんは23,24くらいでしょうか。
養女にいってしまったのは、この作品を描いたどのくらい後のことなのでしょうか?お別れが決まってから描いた絵なのでしょうか?
どんな気持ちでモデルをつとめ、どんな気持ちで描いたのか、、、。

 

欄干から雪吊りをする少女が描かれた「雪旦」(昭和16年)は可愛らしい作品。
明治時代の冬の子どもの遊びに取材した「雪吊り」。
木炭に糸をつけて垂らして雪を玉のようにつけて釣るものだそう。裂け目の多い木炭のほうがたくさん釣れるそうです。
雪遊びもいろいろ。こんな遊び方も楽しそうですね。
これまで知らなかったのですが、調べてみたら、国芳の江戸の雪景色にも、雪吊り遊びが描かれていました。

 

湘南美術アカデミー