世界最大規模を誇るニューヨークブックフェアに集まる、ブックセラーたちを追ったドキュメンタリー映画です。
The Booksellersとは「本を売る人たち」。
本を探し求め、見つけた本を売るお仕事をする、本を愛する人たちのこと。
登場するのは、ニューヨークの老舗書店の人たち、有名なブックディーラー、希少本のコレクター、伝説の人から若手まで。
宝物の本についていきいきと語る、本にとりつかれた人たちの、本への深い深い愛情を感じる映画です。
ブックセラーズのおうちは天井までの本棚に埋め尽くされています。「人間の想像力の歴史のウォーカー図書館」という、
エッシャーのデザイン?と思うような魅力的な建築の、美術館のような、ウォーカーさんの私立図書も出てきます。
非公開だそうですので、本当に自分のための図書館なんですね!
いくつかの言葉の中に、ブックセラーズの思いがわかるものがありました。
「本をオークションで散逸させたくない」
「本に正しい家を見つけてやるのは医者が患者を治すことに似ている」
「その本の正しい住所に戻すこと、その本にふさわしい人であり心からその本が欲しいけれど買えない人」
「本もまた その読者を読む」
あくまでもbook firstなのでした。
ビル・ゲイツによって史上最高額の2800万ドル約28億円で競り落とされた「レオナルド・ダ・ヴィンチのレスター手稿」や
若草物語のオルコットが偽名で書いたパルプ小説、
人間の皮膚で作られた本をはじめ、宝石入りの本などの希少本が、たくさん紹介されます。
本作によると、多くの人がアートを所有したいと思うのにくらべて、希少本であっても所有したいと思う人は少ないそうです。
その理由は、本は絵画と違い他人に見せびらかす戦利品になりにくい(さわられたくないという気持ちもある)ということや、
印刷物なので、よほど変わったものでない限り一点ものではない(その代わり、誰に所有し継がれてきたのか、本への書き込みや汚れ、といったものが注目されます)ということがあるそうです。
近年、株と同じように投機目的で購入するアートコレクターが増えていると聞きます。
ブックセラーズは投機目的ではなく、けれど、ぜったいに売りたくないタイプのアートコレクターとも違うようです。
自分のテーマで探し求めた本なので売れるとは限らない。売らなくてもいいんです。蒐集家でもあるのですから。
求めている人がいて、その人に売れたらとっても嬉しい!共感し共有したい!という気持ちでしょうか。
ちなみに、ビル・ゲイツは世界中の各都市で一年に一度、「レスター手稿」を公開しているそう。
2018年2019年にはダ・ヴィンチ死後500年を記念して、ウフィツィ美術館に展示されました。
ビル・ゲイツが「レスター手稿」を、スキャンしデジタル画像にしたことで、
ダ・ヴィンチの手稿の中身を、ずーっと先の未来の人々まで知ることができる!
なんと素晴らしい人類貢献!
ダ・ヴィンチ最高額といえば「サルバトール・ムンディ」!もありましたね。
2017年、美術史上最高額 4億5030万ドルで落札された絵画です。
落札者は明かされず、現在どこにあるのかもわからないといいます。
こちらは、いつか見ることができるのでしょうか???
ブックセラーズのお家には、膨大な本とともに、アンティークな品々が飾られています。
アートオークションで高価格で取引されるようなものではなく、動物の骨とか部族の飾り的な、そのような類のもの。
本の蒐集過程で興味を持ち出会ったような品々で、これもまた本と同様に宝物。
「ブックセラーは探検者で歴史学者」なのですから。
オープニングクレジットは「本は長生きして私たち人間の考えが生み出した全てのものを伝える」。
「本」の魅力と、ブックセラーズの豊かな世界に触れることができる映画でした。