そごう美術館「ミュシャ展」

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グラフィックデザインはもちろん魅力的ですが、素描の素晴らしさに感動しました。

とくに気に入った素描は、光の奥行きに引き込まれるものでした。
ラトゥールの「大工の聖ヨセフ」を思い出しました。

素描だからこそ、さらにあたたかく穏やかに、作品の隅々にまで、光が届いているのだと感じます。

「永遠の門 ゴッホの見た未来」


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 画家であるジュリアン・シュナーベルが監督のゴッホの映画を見ました。
ゴッホ役のウィレム・デフォーが、よく見るゴッホの自画像にそっくり!

ゴッホがパリでゴーギャンと出会い、南仏・アルルへと向かうところから物語は始まり、亡くなるまでの半生を描いたものです。


ゴッホはピストルで自殺したものと思っていたのですが、
少年たちに襲われて撃たれたという内容で驚きました。
近年、そのような説もあるのだとか。

テオやテオの奥さんとの、あたたかな交流などは描かれません。
ゴッホの姿や背景から、ゴッホの苦しい心情が伝わってきます。
デフォーだということを忘れそう!

作中にはゴッホが描いた作品が多数登場しますが、これらはシュナーベルと、シュナーベルに絵画を教わったデフォーらによって描かれたものだそう。
シュナーベルのこうした考えによって、デフォーは「ゴッホ」を取り込んでいったのではないかと思いました。
絵を描くシーンも見どころです。


パリのレストランで、ゴッホゴーギャンロートレックなど何人かの印象派の画家で展覧会を開いているシーンがありました。
モネやルノワールら、大並木通り(グラン・ブールヴァール)の画廊に展示される大家と比べて、小並木通り(プティ・ブールヴァール)の画家と称していたそう。
ほかの画家のように紳士的な服装でもなく、人との交流も得意でないゴッホは、絵画について皆で語り合う場面で浮いています。
当時の画家たちの様子を知ることができる興味深いシーンでした。

ずっと作品が売れず貧しかったゴッホアンデパンダン展での評判も耳に届かなかったのが悲しい。
ゴーギャン、ガシェ医師、聖職者との触れ合いは、ゴッホの心に、どれだけあたたかな灯りをともしたことでしょうか。

 

ゴッホの心の中を、映像で描いた映画なのです。
原題は『At Eternity's Gate』のみ。

ピストル自殺だと思われていた理由は、
ゴッホが少年たちに撃たれたことを黙っていたからなのです。黙っていたゴッホの心の内は?

そして、「ゴッホの見た未来」とは、何だったのでしょうか。
私には答えはわかりませんでしたが、黄色い画面が目に焼きついています。

 

湘南美術アカデミー 

 

 

 

東京都美術館「コートールド美術館展」12月15日までです。


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東京都美術館で開催中の「コートールド美術館展」に行ってきました。

実業家サミュエル・コートールドが収集したコレクションです。

セザンヌを見出し、いち早く収集したコートールドならではの、セザンヌのコレクションは圧巻です。


話題になっている、マネの「フォリー=ベルジェールのバー」は、仕事で勉強していたのでその復習として見てきました。

セザンヌ、ホイッスラー、ゴッホシスレー、モネ、ルノワールドガ、マネ、
スーラ、ボナール、ロートレックモディリアーニ、ルソー、スーティンなども、たっぷり楽しめます。

ポール・セザンヌ「曲がり道」、クロード・モネ「花瓶」、アンリ・ルソー「税関」など、新たな好きな作品と出会えて、なんだか新鮮な気持ちになれました。

主要作品には、「見どころ」が、大きく分かりやすく紹介されていますので、知識がなくても大丈夫。これだけの作品がイギリスに行かずとも、上野で見られるのですから、ぜひ行かなくては!
12月15日までです。

 

 湘南美術アカデミー

リヒテンシュタイン公爵家の至宝展

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Bunkamuraザ・ミュージアムで「リヒテンシュタイン公爵家の至宝展」を見てきました。

リヒテンシュタイン候国歴代の当主が愛した素晴らしいコレクションの展覧会です。

リヒテンシュタイン候国って??
スイスとオーストリアにはさまれた国です。
人口3万5000人ほど。
アルプスの山々に囲まれライン川の流れる小さな国は、世界で唯一公爵家の家名を国名とするユニークな国家なのだそう。

美しい美術品を集めることにこそお金を使うべきという家訓のもと、集められた至宝が並びます。

16世紀前半ドイツで活躍した北方ルネサンスの画家クラーナハ父、ルーベンス、ヤン・ブリューゲル父、グイド・レーニなどの他、金属の装飾を施した陶磁器など、美しく豊かな国のコレクションは、鑑賞者の心も豊かに、幸せな気持ちにさせてくれます。

鵠沼海岸シネコヤで「アートのお値段」

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 鵠沼海岸のシネコヤで上映中の『アートのお値段』。このたび、やっと見ることができました。

映画に登場するのは、アーティストやコレクター、オークショニア、ギャラリスト、評論家など。
熱気あふれるオークションのシーンから始まり、もうワクワクです!
前澤友作さんが所有しているジャン・ミシェル・バスキアの《Untitled》が落札される瞬間も出てきます。
ちなみにこの作品は、現在、六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで開催される『バスキア展 メイド・イン・ジャパン』で展示されています。



 ナサニエル・カーン監督が「そもそも、アートの価値ってなんだろう?」という疑問を美術界の有力者たちに投げかけながらアートとお金の関係を探っていく作品で、ラリー・プーンズ、ジェフ・クーンズ、エイミー・カペラッツォ、ステファン・エドリス、ジェリー・サルツ、ジョージ・コンド、ジデカ・アクーニーリ・クロスビー、マリリン・ミンター、ゲルハルト・リヒターらが出演しています。


 《ラビット》が100億円で売却され、代表作《ゲイジングボール》で知られるジェフ・クーンズ。
ルイ・ヴィトンの定番のバッグがダ・ヴィンチモナリザになっていますが、
ルイ・ヴィトンとクーンズのゲイジングボールの世界のコラボレーションだったのです。
ファッションブランドとアートの関係についても描かれています。

 

 売れるものを作り出していく、クーンズや村上隆に対して、
ビジネスとして「再発見」されたラリー・プーンズという60年代に一世風靡した抽象画の画家が、
「売れるものを描くのではなく変化していきたい」など語りつつ、
林の中のアトリエでマイペースで製作する様子も印象的でした。


 クーンズのアトリエのシーンに出てきたのは、ルネサンス時代のイタリア人画家であるティツィアーノの絵に「ゲイジング・ボール」をつけて、見る人を絵のなかに入り込ませるという仕掛けをした作品。クーンズはスタッフに色の順番、番号などすべてを細かく指示していることから、「自分の指に“こうしろ”と指示するのと同じで<私自身が描いているんですよ>」と述べます。
自分で描く・描かないことについて。複製とは何なのだろうか?ということについて考えさせられます。


 コレクターのステファン・エドリスもクーンズ作品を所有するひとりで、有名なスチール彫刻作品の「ラビット」や、フランスの写実主義の巨匠であるギュスターヴ・クールベの《眠り》にゲイジング・ボールを組み込んだ作品などを披露し、
もう飾る壁がない、というようなことを述べていました。
そして映画の最後で、シカゴ美術館に、ウォーホル、クーンズ、村上、カテランなどを寄贈し、「孫がいないからね」と言うステファン・エドリス。なんて素敵なんでしょう。アートとコレクターの関係がみえる感動的なシーンでした。



 巨匠たちが描いた作品が、90年代にどんどん美術館に入ってしまったそうです。
作品がなくなればオークションハウスが運営できなくなり、アート市場は縮小してしまう、ということですが、
オークションハウスのフィリップス会長兼最高経営責任者であるドルマン氏は、
現代アートは今つくられている、無限に供給することができます」と述べるのです!
お金を使いたい人がいるから、ビジネスとして、どんどん供給しますよ、ということ。
作品が素晴らしいから高額でも買いたいとか、人気があって高額だからこそ何としても欲しいということだけではないことを知りました。

ナイジェリアの女性アーティスト、ジデカ・アクニーリ・クロスビーが
オークションで自身の作品が高騰する様子を見ながらコメントしています。高騰する現状とアーティストの思いとは。

 

 「美術館は、まるで墓場」と述べるのは、サザビーズのオークショニアのカペラッツォ。
アーティスト、オークショニアの考え方の違い、リヒター、クーンズや、マリリン・ミンター、シデカ・アクニーリ・クロスビーなど新星アーティストたちの製作中の様子も楽しめ、
かつて作品を見て印象に残っていたウィレム・デ・クーニングの姿も初めて見ることもでき、とても満足できました。
アート、経済、経営、人生、人間模様など、さまざまな視点で味わえる映画です。

 

 2019年現在、最も高額で取引された絵画は、2017年11月15日にニューヨークのクリスティーズで競売がかけられたレオナルド・ダ・ヴィンチの《サルバトール・ムンディ》(4億5000万ドル)。
《サルバトール・ムンディ》が映し出されて、映画は終了。


シネコヤでは20日までの上映です。

湘南美術アカデミー

サントリー美術館「しびれるぜ、桃山 黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部 -美濃の茶陶」展 11月10日までです。

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 サントリー美術館で開催中の「しびれるぜ、桃山 黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部 -美濃の茶陶」を見てきました。
岐阜県の美濃地方で焼かれた美濃焼を代表する黄瀬戸、瀬戸黒、志野、織部の名品を鑑賞できます。

 

桃山時代には、茶の湯のためのやきもの「茶陶」が日本各地の窯で創造されました。
岐阜県の美濃(東濃地域)では、力強い姿、鮮やかな色、斬新な意匠をもつ茶陶「黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部」が大量に焼かれ、おおいに流行しました。
しかし実は、「黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部」が美濃で焼かれたと分かるのは昭和のことで、それ以前は瀬戸(愛知県)で焼かれたと考えられていました。
昭和5年(1930)、荒川豊蔵(あらかわとよぞう・1894-1985)が岐阜県可児市久々利大萱の古窯跡から志野筍絵筒茶碗の陶片を発掘したことにより、
志野が瀬戸ではなく美濃で焼かれたことが明らかになります』

 

秀吉とともに茶の湯を広めた利休の後に、茶の湯を指導した古田織部(1544-1615)の織部焼は、歪んだ形をしています。
古田織部の好みは「ヒヅミタル」というものだったからだそうです。

古田織部の<織部南蛮人燭台>(桃山時代 17世紀)のそばに、<南蛮屏風>(伝・狩野山楽)が展示されています。
信長が、宣教師やスペイン・ポルトガルの商人を積極的に受け入れたことで、外国人の風俗が想像を掻き立てた時代。
狩野内膳(1570-1616)の<南蛮屏風>が有名ですが、こちらも楽しめます。

桃山時代に思いを馳せながら、「桃山風」ともいわれる、美しい美濃焼をたっぷり味わえる展覧会です。

 

 

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ミッドタウン内の「酢重」のランチ。お魚もお肉もあります。

湘南美術アカデミー