新宿タカシマヤ10階のギャラリーで開催中の
加藤良造さん・北村さゆりさん・小松謙一さん・新恵美佐子さん・
松谷千夏子さん・山田 宴三さん
6人の作家による展覧会に行ってきました。
テーマは「遊(ゆう)=遊び。自由さ。」
作家さんごとに個性的な、
日本画の新しい表現を堪能することができました。
松谷先生の描いたのは、リゾート地に寛ぐ女性。
女性の輪郭線は、多くのことを伝えてくれます。
髪の毛の湿度、形のよい小さな骨の入った肩、
柔らかな足の裏、まつ毛の手触り・・・。
重量感や周囲の気温までも感じさせてくれる、1本のライン。
今度、この1本の線を見出すまでの過程をお聞きしなくては。
前田青邨は、何度も何度も描いていくうちに、
1本の線を描くことができるようになる、と言っていましたっけ。
湘南美術アカデミーで日本画を教えていらっしゃる松谷先生は、
ご自身が、美しい輪郭線の方なのです。
クールで透明感のある色を、数色重ねた上に、
銀の箔を乗せたワンピースが、涼しげ。
背景の、あたたかみのある白は、
黄土色を塗った上に、白を重ねていくことで、出来上がるのだそう。
重なった白は、よく見ると、ゆらゆらとした陰影があり、
まったりとあたたかいリゾート地の空気が伝わってくるようです。
金箔と黒のシリーズも素敵でしたが、
銀箔と白は夏にぴったりですね。
加藤良造さんの山水画。
墨と岩絵の具で描かれています。
繊細に描かれた山水画で、
遠目から山々の様子を見ているのではなく、
山の中に立っているように感じる絵です。
この幻想的な世界は、桃源郷のような理想郷とは違い、
自分自身を深く静かに掘り起こしていく場所。
こんな風に、山水画の世界に入ってみたかったのだと、
ずっと思っていたことに、気がつきました。
加藤さんは「すべてここにある」とおっしゃっていました。
新恵美佐子さん。
中国の墨と紙を使っています。
中国の墨は、日本の墨にはない、
荒々しさを持っているのだそうです。
新恵さんは、繊細な雰囲気の美人なのですが、
インドが大好きで、
ガンジス川にも入れるというワイルドな方。
年に何度も訪れるほどインドに惹かれているのは、
初めてインドに行った時の体験にあるそう。
「真実はここにある」と思ったのだそうです。
「死んでいく人は死んでいくのだ。今、水を与えて息を吹き返したとして、
あなたはその後も責任を負えるのか」
という生と死の現場に遭遇したことの衝撃が、
大きかったと話してくれました。
新恵さんの作品は抽象的で幻想的。
インドのお話を聞いたせいか、
荒々しさが魅力の中国の墨で描かれたものは、
生まれてくるものと、
流れゆくもののエネルギーに見えました。
そのエネルギーはどちらかが大きいのではなく、
同じ割合で伝わってきました。
現代の日本画の魅力を、たっぷり味わえる展覧会です。
27日(月)までですので、ぜひお出かけくださいね。
松谷先生と新恵さんは、
10月に展覧会を開催予定です。
かつて日本画家の方が,
自宅アトリエとして使っていた邸宅を
画廊に改装した空間です。
秋風の心地よい日本家屋のギャラリーで、
現代日本画を楽しむひとときは、
特別な時間になりそうですね。
詳細は、またお知らせいたしますね。