よくわかる「マグリット展」

イメージ 1
 
イメージ 2
 
イメージ 3
 
イメージ 4
見に行った日は雨降りでしたので、予告の時のディスプレイを。
 
国立新美術館で開催中の
ベルギーの国民的画家であり、20世紀を代表する画家の
ルネ・マグリット展に行ってきました。
2002年以来13年ぶりとなる本格的な回顧展です。

 
ブリュッセルにあるベルギー王立マグリット美術館の協力で
130点もの作品が並びます。

 
マグリットについては、デザイン的でオシャレ、
理解のできない不思議な、だまし絵のような絵というイメージで、
それほど興味を持っていなかったというのが本当のところ。

 
ところが、マグリットの世界にどんどん引き込まれていきました。

 
マグリットの言葉を読みながら、その意図を心に留めて作品を見ていくと、
マグリットの作品は、わけのわからないものではなく、
数学の解答のように、きっちり明確なものに思えました。
なので、結構エネルギーを使って見ていきましたので、
すべて見終わったときには、達成感があったほど。

 
少年期の大きな出来事は13歳くらいで体験した母の自殺だったそうです。
このことがマルグリットの作品に何かしらの影響を与えているのかいないのか
 まったく触れられていませんでしたが、
現実逃避の思いから、
マグリットは事実の向こう側を見ていたのかも・・・。
 
 
初期の作品には未来派、抽象派、キュビズム的な作品がありました。
壁紙工場で図案家として働いた後、
商業デザインの仕事をしていたということで、
アールデコの雰囲気のあるポスターなどがありました。

 
1925年頃からキリコやエルンストに接してシュルレアリスムへ。
 
 
『 私の絵画が体現していた神秘・謎についていうならば、
一般的に存在についての真実の感情にとって代わっている、
あのばかげた精神の習性の総体を
私が断絶したことを示す最良の証拠だったのです』
生命線(1938)より
 
 
たとえばコップ。水などを入れて飲むための道具だと思っているけれど、
本当にそう?そう思いこんでいるだけじゃない?
という風に、マグリットは考えるのです。
 
 
また、事物が次第に別のものへと溶け込んでいくことに気づきます。
作品のタイトルには、発見 変容 出現 変化 意味 用法 などが見えます。
マグリットの関心がこうしたところにあったことがわかります。
 
 
マグリットは、日常的なオブジェが投げかけるものを問題ととらえ、
解答を表現したイメージを描き出しています。
私たちは解答である絵を見ているので、
では問題は何?と考えると、
自分が見ていなかった時空が見えてくる。

 
見えないものが見える、気がつくという体験は素晴らしい!
現実って秘密に満ちているんですね。
 
 
また『日常的な物に悲鳴を上げさせたい』と
馬の首に付いている鉄の鈴を取って
深淵の縁に危険な植物のように生やした<深淵の花>(1928)があるのですが
この鈴がさまざな作品に出てくるのです。
このモチーフがどのように使われているかを注目して見てみました。

 
『目に見えるものは隠されるが目に見えないものは隠せない』
というマグリットの言葉は心に残ります。
 言葉という形のないものの真実や、
自分のもった感覚の解答を見つけるために、
マグリットは作品を描いていたのではないかしら。

 
 昼と夜に賞賛と脅威を抱いていたというのもおもしろいです。
そんな風に考えたこともなかった・・・。
昼がきて夜がくる、同じ空間に昼がきて夜がくるということ。
気づいてしまうと何て不思議で面白いんでしょう。
 
 
マグリット自身の撮影によるホームビデオでは妻と楽しげに、
実験をする様子が見られます。
実験していたのねー。
実験に基づいた作品だったのですね。
 
 
内省的なイメージを持っていたので意外でした。
マグリットはとても幸せそうでした。