損保ジャパン美術賞、小野さおりさんの作品 01月28日

 新宿の損保ジャパン東郷青児美術館で、第31回損保ジャパン美術財団 選抜奨励展を見てきました。会場をずーっと見て行き、最後に展示されていた小野さおりさんの作品に心が動きました。水の質感、ガラスの質感など透明なものの質感が、小野さんならではのリアル+αで描かれています。

エメラルドグリーンの画面に描かれる人間は無表情で、魚の目にそっくりなゼラチン質が光った目をしています。貝も描かれているので、作者は海が好きな方なのでしょう。でも単純に幸せな海の絵ではない気がします。海と共存することを諦めているというか受け入れざるを得ないというか・・・。不気味にも思える絵もありますが、なぜか惹きつけられます。透明なバリアが絵から広がってきて私を包み込んでくれるような安心感!小野さんの絵がとても好きだと思います。でも部屋に飾りたいかと聞かれれば飾れない。小野さんの作品は私にとって、重すぎる気がする・・・。

こんなことを思いながらじっくり眺めていたら、アーティストトークが始まり、なんと小野さんご本人がやってきて、作品の説明をしてくれたのです。澄んだ声のチャーミングな方です!

福島の漁師の娘さんの小野さん。小さい頃から海は身近で親しんでいたけれど怖いものであった。海の事故で、お父さんは戻ってきたけれど、おじいさんを亡くしてしまったから。
多くの人が犠牲となった津波の後は、原発で漁ができなくなった。お父さんも、それを手伝っていたお母さんも海の仕事ができない状況が続いている。

子どもの頃は漁師の娘であることを恥ずかしいと感じた時期もあったがそれを受け入れた頃から、海をテーマにした絵を描きたいと思うようになった。瓶に貝などが入った絵は、おじいさんに捧げる供物なのだそう。

出身校の女子美で学生の相談係を務める小野さんは、人は一人じゃなくて皆に守られているんだよ、ということや、何でも持っているし何でもできるんだよ、ということを伝えたいとおっしゃっていました。

現在はもう少し明るい色の作品を描いていらっしゃるとか。作品をご覧になりたい方は損保ジャパン東郷青児美術館へ。小野さんのHPでもご覧になれます。