神奈川県立近代美術館 鎌倉・鎌倉別館では「現代への扉 実験工房展 戦後芸術を切り拓く」が開催されています。
名作を披露するだけでない 企画者の視点が入り込んだこのような展示はこちらの美術館独特のものでしょう。昨年秋の「コレクター気谷誠の眼・鯰(なまず)絵とボードレール展」でもコレクター気谷氏の人柄に魅了されましたが、今回も、展示のもつドラマに引き込まれアーティストの想いに踏み込んでいけた気がします。
「実験工房」とは、1951年に結成された若手芸術家たちの集まりです。第二次大戦後、社会全体が復興への道を歩みだした頃、美術、音楽、照明、文学などジャンルを超えたグループとして結成され、1957年頃までの間、造形・音楽のみならずダンス、演劇、映画といったさまざまなジャンルと結びついた造形活動を、実験という精神のもとに行っていたということ。
知らないアーティストばかりだと思っていたらポスターに若き日の武満徹さんを見つけたので、ちょっと嬉しくなりました。ピアニストの及川浩二さんやヴァイオリニストの千住真理子さんのコンサートを聞きに出かけていた八ヶ岳音楽堂でお目にかかったことがありましたっけ。
現代音楽の魅力も現代美術の魅力もまったくわからないのですが、今につながるアートの基礎をつくったアーティストの活動は興味深いものでした。
この美術館は1951年、実験工房の結成と同じ年に建てられたものです。だからでしょうか、展示室の扉の向こう側には、若きアーティストたちが悩みながら楽しみながら熱くアート作品を作っていた時代の空気感がそのままのように広がっています。貴重な企画展をぜひ五感で味わってみてくださいね。
鶴岡八幡宮のぼたんが見頃です。美術館から見える池の眺めが好きなのですが泥をさらっているところで水がありませんでした。水たまりほどの水が天井に映ってアートな眺めを作りだしていました。