パナソニック汐留美術館「オディロン・ルドン光の夢・影の輝き」展6月22日までです

岐阜県美術館蔵

1896年頃 油彩《神秘的な対話》

 

特徴的な青がどの作品にも見られます。

 

 

オルセー美術館ルーヴル美術館版画素描部)1885-90年頃 木炭《光の横顔》

 

パナソニック留美術館でルドンの展覧会を見てきました。

花瓶の花のような美しいパステル画、また一つ目小僧のような奇怪なモチーフの木炭画やリトグラフ。どちらもルドンが生み出すものであることに不思議な魅力を感じていました。

この展覧会で、ルドンの画業の変遷を知ることで、ルドンの人物像に初めて触れられた気がしました。

初期のリトグラフや木炭画に見られる幻想的で内省的なモノクロームの「黒の時代」から、後年のパステルや油彩による鮮やかな「光の時代」まで、ルドンの劇的な変化を時系列で体験できるように構成されています。

 

ルドンが生きた時代の欧州では、アカデミックな芸術に対して印象派象徴主義などの新たな芸術潮流が次々と起こり、さらにフォーヴィスムキュビスムなどの様々な前衛美術が台頭。

また、この時代には、科学の発展による技術革新が社会構造や思想に多大な変化をもたらしました。ルドンは、変貌する社会と移り変わる芸術傾向の中で、新しい画題に取り組み、木炭画や石版画からパステル画や油彩画へと表現媒体を変えていきました。

 

1872年にパリに再び移り住んでからのルドンは、主に木炭画を制作し、奇怪なモチーフによる奇想の世界や、気球や電球など最新の技術への関心を、モノクロームで表現していきます。一方で、石版画にも取り組み石版画集を出版します。

1896年、パリの凱旋門近くに居を構えると、ナビ派の画家たちが挑戦していた装飾的な絵画にも取り組むようになります。

神秘的な主題を扱う一方で、神話、宗教、人物などもテーマとし、なかでも「花瓶の花」は晩年のルドンを代表する画題となります。種類の異なるパステルの重なりがもたらす光の効果や、油絵具を使用しながらパステルのような輝きを発する描き方を追求し、進化を遂げます。

1890年代以降、色彩画家へと変貌を遂げていったルドン。柔らかく発光するような色彩はルドンだけのもの。絶妙な色同士の溶け込み具合が魅力的で幻想的な美しさに惹き込まれます。

 

ルドン作品は日本人の画家にも愛されるものでした。早い時期にルドンの実作品を日本にもたらした人物は、大原美術館のコレクションの選定で知られる洋画家児島虎次郎。梅原龍三郎中川一政岡鹿之助、須田国太郎、伊藤清永などの洋画家や、竹内栖鳳や土田麦僊などの日本画家も、ルドンの作品を所有していたというのは驚きです。どの作品を所有しどこに魅力を感じたのかしら。

そして現代に至るまで、美術や文学、音楽、漫画など幅広い分野でインスピレーションを与え続けているというルドン。

多くの作品が世界屈指のルドンコレクションで知られる岐阜県美術館のものでした。岐阜県についてはまったく知らないのですが、ルドンを見に行ってみたいと思いました。