「サー・ジェイムズ・ダイソン」とは?

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モダングラフィックの授業で井手先生が教えてくださったダイソン氏のこと。とても興味深いお話しでした。

ダイソンといえば、掃除機や羽根のない扇風機でおなじみですね。

ダイソン氏はダイソン社の創業者でありデザイナーでもあります。
1947年生まれのプロダクトデザイナー、発明家でもあります。

ダイソン氏は美大を出ているのでしょうか、それとも工学系の大学で学んだのでしょうか
または両方?

というのが、「デザイナー」を目指す生徒さんの多い湘南美術アカデミーでは、気になるところです。

1965年から1966年までセントラルセントマーチンズ (有名なデザイナーを輩出ロンドン芸術大学のカレッジの一つ)で学び、

1968 年から1970年 Royal college of aaAart英国王立美術大学
(ロンドンにあるイギリスの国立大学、修士号と博士号を授与する世界唯一の美術系大学院大学。6年連続アート デザイン分野の世界一位(2020年時))で、家具とインテリアデザインを学んだのち工学に転向。


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先生からお借りした昭和62年発行のカースタイリングにインタビューが掲載されています。

ダイソン氏の言葉をたくさんご紹介したいので、載せていきますね。


「Gフォース掃除機が売れ始めているという」

「スタイルだけでなく卓越した性能をもたらすメカニズムが革新的なのである 」


ちなみに約35年前とは、国民総生産はアメリカを抜き第1位、株も東京の地価も爆上がり❗️のバブル景気、そんな時代にデザインも機能も価格(20万円)も驚きの掃除機が登場したのです。

この「紙パック不要のデュアルサイクロン掃除機」(Gフォース型サイクロン掃除機)の完成に6年かかっているのですが、その理由をダイソン氏が述べています。

「スタイリングすることだけがデザインであれば、同時にいくつものプロジェクトをこなせるが、私はテクノロジーを根本的に追求することからデザインを始める」

「私自身は通常プロダクトマネージャーとして働くが装置の準備やプロトタイプの制作に携わる専任のエンジニアが必要 こうしたやり方で仕事を進めるために」

「デザインすることがスタイリングすることのみを意味するのであれば一度に一つ以上のプロジェクトをこなすことができる。
しかし私は研究することで新しいテクノロジーを発見するための挑戦を楽しんできた。そしてあえて広い範囲からテーマを決めるようにしてきた。自分自身で会社を興して、その事業に投資するという形をとらざるを得なかった。」



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「私は研究することで新しいテクノロジーを発見するための挑戦を楽しんできた。そしてあえて広い範囲からテーマを決めるようにしてきた。どんなテクノロジーの中にも存在する技術の革新に触れることはさほど時間のかかることではない。そこまで到達してしまうと専門家と呼ばれる人が不可能だと思っていることを、先入観のない新鮮な頭が具現化することさえできるのである。
こうしたチャレンジにやみつきになってしまったらしい」

「デザインについて哲学はもたぬ。そのことによる束縛を嫌うから。だが常に従うべき3つのルールがあり。

1 デザインをするときはオリジナルなテーマを選び常にそれを意識すること。しかし徹底するのは退屈に通づるのでやめたほうがよい。実際テーマをより面白く全体に調和をもたらすのは一見矛盾したことが原因かもしれないのだ。

2 デザインは必ずどこかにユーモアがひそんでいること。予想外なこと、変わったことがそのデザインに見出だせることである。それが持続的な価値をもたらし使い手に楽しさを提供するのだ。

3 分析し実験することである。スタート時点からめざましい資格効果など狙わず分析と実験に執着するのだ。デザインの最も顕著な特徴は製品を実際にdesigningデザインするという行為から生まれる to invent発明する、創案するという文字通りの意味はto come upon出会う はたと思いつく ということであり、クリエイティビティとはまさにこのように起こるものだと私は信じている。さまざまな情報を吸収しそこからプロダクトを理性的に築き上げていくのである。」

その仕事とかけ離れた、一見関係なさそうなジャンルの知識の豊富さや視野の広さが、仕事をするうえでどれほど重要かということは、今ではよく知られていることですが、こちらは35年前のインタビュー。

ロイヤルカレッジオブアート時代から、
シートラック(海上輸送船)1969-1973を発明し、35年前のインタビューで、このように語っていることに感動するのです。

シートラックとは、43ノットで移動可能なワーキングボート 水深13センチの浅瀬でも走破できる 50か国以上で販売され15年以上の間世界中で使われているそう。

その4年後にはデザインイノベーションアワードを獲得したボールバロー(1974-1978)を発明。

バルーン風船型ホイールを開発し、取り付けた小型手押し車。
いたって単純なものです。

ボールバロウに使われた車輪を応用したボート運搬用のトロリーボールはセーリング後の陸上げ作業を容易にした。全長2,3メートルのトロリーボールは15キロ コンパクトに折りたためるというもの。

あっと驚き目を見張るようなデザインの、実用性抜群の発明品の数々。プロダクトデザイナーに必要なことは何か、どのような視点が大切なのか、
ダイソン氏のインタビューから学ぶことは多くあると感じます。

湘南美術アカデミー